血液検査で何が分かる?不妊治療の血液検査 矢野鍼灸整骨院
病院で不妊治療を始める前に、血液検査を行います。
この血液検査は主にホルモンの量、感染症の抗体、貧血など体調の不具合を調べ、妊活の妨げになる要素を探すのが目的です。
ここでは血液検査で分かることと、その治療法について紹介します。
不妊治療の第一歩!治療前の血液検査項目とその意味とは?
不妊の原因はさまざまです。
普段は意識しませんが、妊娠に至るまでには多くの過程を経る必要があります。
そのうちの1つでも欠けると妊娠の妨げになることがあり、早急な対策が必要です。
血液検査では主に、妊娠にかかわるホルモンや感染症の有無、貧血など健康状態を測ります。
血液検査で分かるホルモン値とは?
血液検査では、ホルモンの値を調べます。どのホルモンを調べ、どんな作用があるかを簡単に紹介します。
・エストロゲン
女性ホルモンの一種。
卵胞ホルモンと呼ばれるホルモンで、卵胞(卵子を包む組織)を育てる作用があります。
月経の前半~排卵期まで分泌されるホルモンです。
不足すると卵胞が十分に育たず、排卵ができない可能性が上がります。
治療ではエストロゲン製剤などを服用します。
足りないホルモンは薬を適量補うことで、改善ができます。
・プロゲステロン
女性ホルモンの一種。
黄体ホルモンと呼ばれるホルモンで、排卵が終わった卵胞のカラから分泌されます。
月経の後半に分泌されるホルモンで、体温を上げ、受精卵が着床しやすくして、妊娠しやすい身体を作ります。
プロゲステロンが不足すると「黄体機能不全」になり、たとえ着床しても妊娠継続が難しくなります。
黄体ホルモン剤の投薬をして治療を行います。
・プロラクチン
授乳中に分泌されるホルモンで、妊娠を妨げる作用があります。
授乳中以外でプロラクチンの値が上がることを「高プロラクチン血症」と呼び、妊娠を望む方にはプロラクチンを下げる薬を投与します。
プロラクチンが異常に増える原因は、ストレス、薬の副作用、脳腫瘍の3つが多いのが特徴です。
甲状腺機能や腎機能が下がって発症することもあります。
治療を行いながら、主たる原因であるストレスの解消を心がけましょう。
・甲状腺ホルモン
甲状腺とは喉にあるホルモンを出す器官で、新陳代謝を促すはたらきがあります。
甲状腺ホルモンが少ない「甲状腺機能低下症」や「橋本病」になると、不妊や流産を引き起こします。
甲状腺ホルモン剤を服用して、足りない分を補います。
服用後すぐに効果が表れますが、妊活中はもちろん、妊娠中、産後も注意深く量を調整して服用を続ける必要があります。
血液検査では感染症、健康状態を正確に測ります
ホルモンバランス以外の妊娠の妨げになる原因のひとつは感染症。
感染症は妊娠を妨げ、妊娠しても悲しい結果を起こすことが珍しくありません。
それを防ぐために血液検査では梅毒、クラミジア、風疹抗体の検査を行います。
近年、日本では梅毒患者が急増し、社会問題になっています。
梅毒にかかった状態で妊娠すると、治療を受けても14%の方は完治できません。
完治できないと赤ちゃんに先天梅毒が起こる可能性があり、流産や死産、身体障害のリスクが急上昇します。
出典:https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20221216b.html
同じ性感染症のクラミジアは卵管を詰まらせ、放置しておくと排卵しても妊娠できなくなります。
卵管は、症状が軽ければ手術などで治しますが、難しい場合は体外受精になります。
どちらの性感染症も「陽性」になれば、ただちに治療を始めます。
パートナーと一緒に、薬をきちんと服用すれば治せる病気です。面倒がらずに治療を続けましょう。
風疹(風しん)は空気感染する、非常に危険な感染症です。
妊娠中に感染すると流産などのリスクが上がり、赤ちゃんに「先天性風しん症候群」という病気が起こることがあります。
風疹ウイルスは実行再生産数(1人が何人に感染させるかを表す数字)が5~7という、恐ろしい感染症です。
病院では風疹の抗体の有無を調べます。もし「陰性」なら風疹ワクチンを接種してから治療を始めます。
ご本人はもちろん、できるだけ同居するご家族全員が風疹抗体の確認か、風疹ワクチン接種を行いましょう。
気になるAMHは、あくまで治療の目安にするもの
不妊治療の血液検査で、気にする方が多いのは「AMH」かもしれません。
アンチミューラリアンホルモンを調べる検査で、卵巣の中に残る卵子の元がどれだけ残っているかの指標になります。(検査は2023年4月現在、実費)
AMHの値は年齢を重ねると減少します。
不妊治療では、AMHの値をもとに治療計画を立てることがあります。
年齢の基準よりAMHの値が低い場合は、より短期間で体外受精など、高度不妊治療へ進むことも選択肢になります。
逆に、年齢が比較的若く、年齢相応のAMHならタイミング療法からチャレンジする、と段階を追って治療を進めることもできます。
AMHは多ければ良いものではありません。
多すぎるAMHは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という排卵障害を引き起こすためです。
この場合はPCOSの治療、排卵誘発剤の使用を行います。
このように、AMHはあくまで「治療方針の目安になるもの」に過ぎません。
AMHが低いから妊娠ができない、ということは決してありえません。
数値にショックを受ける方がいるかもしれませんが、「AMHが低いと妊娠しにくい」ことは明確に否定されています。
逆に、AMHが適量=妊娠しやすいとは限りません。
治療方針を決める材料のひとつに過ぎない、ということを頭に置いておきましょう。
(参考サイト)
はらメディカルクリニック AMH検査とは?検査の目的やAMH値の平均値、卵子の質を保つ方法を紹介
https://www.haramedical.or.jp/column/staff/amh.html#:~:text=AMH%E3%81%AF%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3,%E7%9B%B4%E7%B5%90%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%8F%E3%81%91%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82
NHK首都圏 先天梅毒とは 症状・治療・検査は?漫画でわかる
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20221216b.html
田渕レディースクリニック 高プロラクチン血症について
https://www.tabuchi-clinic.org/blog/433/
産婦人科クリニックさくら 不妊と流産の原因「黄体機能不全」
https://www.cl-sacra.com/archives/2573
隈病院 甲状腺ホルモンとは
https://www.kuma-h.or.jp/kumapedia/encyclopedia/detail/?id=214
このブログの執筆者
和歌山の不妊治療・妊活専門鍼灸院 矢野鍼灸整骨院 院長 鍼灸師 矢野 泰宏
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